Straws / Steve Lacy  



  独自のモダン・ジャズからフリー・ジャズを築き上げ、1960年代半ば活動拠点をヨーロッパに移し、様々な文化との交流を持つことによりスティーヴ・レイシーの独自性が進化していった。イタリアの実験音楽レーベルCRAMPSによる76年に発表された本作品は、レイシーにおける新しいジャズのスタイルを模索したソロ作品。なお、6曲中4曲が多重録音でフリー・ジャズが展開されています。



1曲目〈ピンクル〉は、伸びやかなソプラノ・サックスのメロディーが流れます。レイシーの滑らかな柔らかいソプラノ・サックスが同じフレーズにカラーを変えて繰り返します。中盤にはメロディーを挟んで短いフレーズを多用して繰り返していきます。色彩感豊かで心地いい演奏です。

2曲目〈麦わら〉は、オーバーダビング入り、バックにバスクラが2つ加わっての演奏。レイシーのまろやかな透明感溢れるソプラノ・サックスが流れます。2つのバスクラは低く太く厚いブロウで、バランスよくプレイしています。ソプラノ・サックスは比較的淡々とした演奏を繰り広げています。

3曲目〈ドレスの裾〉は、オーバーダビング入り、チェレスタ(鍵盤楽器で、金属音板を叩いて高音域を発生させる楽器、オルゴールに似た音色。)の高音の響きに、ソプラノ・サックスのレイシーがリズミカルにテーマを奏でる。チェレスタは終始一定のリズムで鳴り響いていきます。ソプラノ・サックスの爽やかさと澄み切った音色が縦横無尽に展開されます。

4曲目〈束縛されて〉は、優しく暖かみのあるメロディーが流れます。レイシーのソプラノ・サックスは高音で伸びやかな透き通った音色、そして、スリリングなアドリブと続いていきます。

5曲目〈ネコ科の動物〉は、チェレスタ入りのテーマが流れ、パートでは、レイシーがソプラノ・サックスで猫のような声を表現しています。



6曲目〈上昇〉は、まさに多重録音です。工事現場でのハンドブレーカーのような音が聴こえ、動物の唸り声、ブルブルという音など5つ6つ程聴こえる。このあとも小動物の鳴き声、小鳥のさえずりなどがあらゆる方向から聴こえてきます。くり返し各種動物、機械の音などが鳴り響いていきます。レイシーは実に多種多彩の音色で、高度なテクニカル・プレイをしています。

   

 Recorded. November 28 and 29,
 1976. Cramps. 


 Steve Lacy soprano sax, tape,
 celesta, etc.


 1. Pinochle 6:19
 2. Straws 4:57
 3. Hemline 4:02
 4. Bound 5:27
 5. Feline 6:52
 6. The Rise 13:48